『傷』

左手の甲に

それほど大きくない傷がある

傷つけたのは 去年の夏

自分自身の爪で

血が滲むまで掻きむしった

それからというもの

その傷が癒えそうになると また

同じ場所を引っ掻いている

癒え切らないように

傷跡が 消えないように

何故…?

愚かしいと人は笑うだろう

狂気だとも言うかも知れない

でも

消してはいけない気がする

この傷を 確かに感じた痛みを 全てを…

「忘れる」という事は

浮き世を生きる人に 唯一与えられた救いだと

誰かが言っていたけれど

忘れたくない 消してはいけない

この傷と共に

いつまでも 忘れずに 刻み付けておきたい

想い 感情 痛み 苦しみ

全てを…

左手の甲に

それほど大きくない傷がある…

***

*

半年後