降る星を数え終えたら
泣くのやめて歩いていこう

いつもどおり バイトの帰り道
急に大声で泣きたくなった
何があったわけでもない 何が起きたわけでもない
唐突に
泣かなければ
そう思った
思ったとして涙など
出るわけもなく
ただ 息苦しいような 叫び出したいような気持ちで
曇り空を見上げた

泣きたくても泣けやしない
涙はとうに 凍り付いた
冷えきった心と一緒に

思い返してみたって
このごろ悲しくて泣いたことなどない
泣いている暇なんてなかった
泣いてもどうにもならなかった

友達が亡くなった時も
隣で泣いている親友をよそに
涙ひとつ 流さなかった
俺のかわりに この親友が泣いている
俺の分まで泣いてくれていると思った

泣きたかった でも
泣けなかった

他人のために涙を流したことなどない
いつも 悲しみにくれる人を
慰めながらどこかで
冷めた自分がいた

他人の悲しみのために
胸を痛めて泣く人を見ても
何の感慨も持たなかったかも知れない
冷たい瞳で見ていた気がする

冷たい人間 それでいいと開き直る
開き直るしかなかったし
うわべだけ同情するのは容易かった

だって 泣いたって
何も変わらないじゃないか
状況は変わらない
周りの同情を集めるだけじゃないか

だから 泣かない 泣けない
泣いているぐらいなら
何かしなければ何も起こらない

分かっているし 知っている
でも ときどき どうしようもなく
泣きたくなる
全てが嫌で 悲しくて 寂しくて 壊したくなる時
泣きたくて仕方なくなる

それは全部自分のため
自分がやるせなくて 泣きたくなるだけ
ひとりよがりで自己中心的
知っている 分かっている

でも 諦めている きっと
他人のために泣けない俺は
自分のために泣くことも出来ないのだろうと

これはわたしの涙じゃない

誰か別の人の涙

だって泣きたくなるほど

きっと自分は辛くもないし 悲しくもない

他にもっと辛い立場や 悲しみにくれる人がいる

泣きたいのはそんな人たちで わたしじゃない

わたしなんか 泣く意味なんてない

この程度で 泣いてなんかいられるものか

そんなの 本当に悲しくて辛い人たちに失礼

甘えている証拠だ

だからきっと別の人の涙

本当に悲しくて 辛くて

でも泣けない人たちの分 流す涙

涙はわたしのものじゃない

もっと それにふさわしい人のもので

泣いているわたしはきっと まがい物で

本当のヒロインはどこか別の場所にいて

きっと 唇を噛んで涙を堪えているのだろう

まがい物のわたしが流すのは わたしじゃない

誰かの涙

泣いているのはわたしなのに

悲しみも苦しみも別の人のもの

これはわたしのものじゃない

こんな涙なんていらない

まがい物ならいらない

泣いているのはわたしじゃない

泣いているのはわたし

本当に泣きたいのは

誰…

自転車を降りて 深呼吸をした
そして思う

どうして人は泣くのだろう
そのことにどんな意味があるのだろう

泣いたってどうにもならないのに
悲しいことを示して
慰めて欲しいだけだろう

だってひとは
悲しみにも苦しみにも
留まっては生きていけない

悲しい時 何かが思い通りにならない時
人に優しくされた時 感動した時

昂った感情が涙を呼ぶ

それに意味なんてなくても 人は涙を流すもの

見上げれば雲が晴れて星が出ていた
心は晴れなかったけど
気が晴れた

この星を数え終えたら帰ろうか