君はずっと遠いところ
簡単に声を届けられないところにいるね
それだからこそ何も通さない声を今聞きたいよ
ねえ、だからお願い
空に浮かぶ月に向かって
「大丈夫だよ」とひとこと言って微笑んでくれないか?
そうしたら同じように月を見上げる僕にも
きっとその声は届くから
この凍えきった心に暖かく響くから
                               

少年よ、大志を抱け

その言葉に身近にいる大人の姿を重ねていた

漁師で 毎朝
俺がまだ眠っている早朝に仕事に出かける祖父
 ピアノを習っていた俺を
スクーターで迎えに来てくれた
夕飯が出来上がると
部屋で煙草を吸いながら網を直している
祖父を呼んでくるのは俺の役目だった

毎朝祖父を送りだし朝食の仕度を始める祖母
保育園に迎えに来てくれたのは祖母で
俺は買い物に付き添ったり
通院する祖母について行ったり
家族の中で一番長い時間を
共有しているのかも知れない
祖父が亡くなってからも早起きは変らず
家族の世話を誰よりも一生懸命していた
「人の悪口は言うものでも聞くものでもない」
そうしみじみと教えてくれたのは祖母だった

父と母は共働きで子供と一緒にいる時間は
ちょっと少なかったが それゆえちびのころは
どうやって気を引こうか
考えるのに一生懸命だった
大きくなって 反抗期はもっぱら母に向けられた
互いに少し 似ているからかも知れない
似なくていいと思うところばかり似てしまった
と彼女は言っていた
今では母娘と言うより友達のようだと良く思う

さて
志と言う言葉を思い浮かべる時
父の姿が浮かんでくる

俺が志すのはこの人だ

俺の目から見た話だけれど
父の目にはいつも理想が映っている
それは俺から見ると 高尚で
すこし夢見がちと思えることもある

理想と現実の壁に
彼は何度と無くぶつかったはずだ
そして その双肩にかかる責任の重さは
凄まじいものだ
俺なら潰れてしまう 今の俺なら

父のあとを継ぎたい

そんな思いはだいそれているだろうか

分かっている
俺は彼が持つ責任の重さの一片だって
理解していない

彼の描く理想のほんの一部も
ちゃんと見えているかどうかも怪しい

それでも思う 願う

今必要なのは 努力と勉強 意志と実践

俺の身近にいる人たちの姿は
俺からはあまりに高くて
届かない といつだって諦めそうになる
今この瞬間だって 挫けそうになる

でもいつか 死ぬ間際だっていい
俺の尊敬する人たちと肩を並べてみたい
その思いが生きる糧 忘れてはいけない

今の俺を与えてくれた人たちへ

あなた方が俺の理想です

そして

父よ

貴方が俺の大志です

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