51.檸檬色


少し冷たくて テカテカしていて
とっつきにくそうなくせに
すっぽりと手に収まる形
そして あの重さが大切なんだ

檸檬と言えば思い出すのが梶井基次郎

ずいぶん昔 大学に入ったばかりの頃
生協の書籍部で梶井基次郎の短編集を見つけた
表代作は『檸檬』

高校の国語の授業で習った時から
何となく心に残っていた作品のひとつだった
そのわけは今でもよく分からないけど

ああ そうだ
あの憂鬱に囚われた姿が そこから抜け出そうともがく姿が
共感を誘ったからかもしれない

そして麗しく魅力的に表現されていた
あのレモンの色彩
その言葉の力が魅力そのものだったのかも

作品の終盤
主人公は百貨店に入り
そこの本屋でいろんな画集を積み上げては崩し
ようやく出来上がった書籍の塔に
持っていたレモンを置いてそのまま店を出た
大人らしからぬ悪戯に心踊らせて
主人公の憂鬱は去ってしまう

憂さ晴らし
そんな言葉がよく似合うかもしれない

さて
私のレモンはいったいどこへ行ったやら

何をしても気分が晴れないのは
「何をしても気分が晴れない」と信じているせいで
きっと
「簡単なことで憂鬱はどこかへ行ってしまう」と
信じていることが大事なんだろう

たとえ書籍とレモンの塔がなくても
何か特別で画期的な解決法なんてなくても
「明日はきっと素敵な一日になるはずだ」
そう呟いてみれば良い

レモンの色を想像してみる
のっぺりとした明るい黄色
黄色はそう 幸せを呼ぶ色なんだって…


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