46.枯色


遠回りの帰り道

珍しく 立て続けに2本目の煙草を取り出した

風を遮って火をつける

霧雨に霞む街を 再び走り出した

ひどい頭痛にみまわれて その上

煙草のすい過ぎで吐き気がする

何もかもが霞んで

イヤフォンから聞こえてくる音楽だけが現実のよう

"歩いてく 何処までも 時折振り返る道
歩いてく もう一度 君と逢えるまで"

この頭痛も 吐き気も 霧雨の冷たさも

俺だけが知っているもの

他の誰も知らない

俺がいなくなったら 誰も知らない

タクシーに道を譲る ふたり乗りの原付を見送る

歩道には 幾筋かの自転車の跡

振り返れば そこに交じる 俺が通った自転車の跡

俺の先に道は無く 通り過ぎた後ろだけに跡が残る

"歩いてく 何処までも 時折振り返る道
歩いてく もう一度 君と逢えるまで"

このさき また たくさんの人と出会い すれ違い別れて

生きてゆくだろうことを思った

そしてきっと 俺の通った跡だけが残る

それも いつしか消えていく

リフレインが続く

吸い切った煙草の 枯色のフィルターを投げ捨てる

"歩いてく 何処までも あるがまま あるがまま
歩いてく 何処までも 歩いてく… …"



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